ものづくりストーリー

ラフィアができるまで

マダガスカルと日本を、ラフィアへの愛で繋ぐ。

今回は、プリスティンの夏に欠かせないアイテムとなった「ラフィア製品」を作る、マダガスカルの様子を取材しました。

2016年に取材をさせていただいてから8年が経ち、工房はどのように変わったのでしょうか。すべてのものには生まれてきたストーリーがあります。みなさまの手元に届くまでに辿ってきたものづくりの様子を、少し覗いてみませんか。

プリスティンとラフィアの出会い

ラフィアを作ってくださっているミアラカ代表・井口あゆみさんとプリスティンの出会いは、2015年。

当時アバンティの代表であった渡邊智恵子が審査員を務めたソーシャルビジネスの大会に井口さんが出場されていたことをきっかけに、2016年より一緒にものづくりをするようになりました。


井口さんは発展途上国への国際協力に従事していた際、世界最貧国であるマダガスカルが援助に頼る体質ができてしまっている現実を知り、「援助ではなくアフリカの人たち自らの手で経済発展・自立ができる支援をしたい」との思いから、マダガスカルの人々への雇用と収入を目的として、世界最高級ラフィアを紡ぐミアラカを立ち上げました。

ラフィアとは

ラフィアはマダガスカル島やアフリカ大陸、フィリピンなどに自生するラフィア椰子の葉から採れる天然繊維です。

昔から生活に密着していたからこそ、葉は帽子やバッグに、枝は家屋の資材に、柔らかい部分は食用など、捨てるところなく使われて愛されてきました。

また、マダガスカルの人々は手先が器用で、勤勉な国民性。学校で教わるでもなく編める人も多いそうです。

軽くて丈夫なマダガスカルのラフィアは、世界最高品質。使うほどにツヤが増して味が出るため、長く使える製品になります。
葉っぱだけでも1m程あるため、繊維が長く採れる大きな木が想像できますよね。ミアラカでは首都から離れた地域で収穫されたものを使用しています。

幹から切り落とした葉は、そのままにしておくとすぐに乾いてしまうため、その場で素早く外皮を剥がす作業を行います。
剥いた瞬間は薄緑の半透明ですが、乾くと薄いかんぴょうのようになり、それがバッグや帽子に使われる繊維(内皮)となります。


ミアラカの工房では繊維をマルシェで仕入れたあと、ねじられた束を解いて綺麗に洗い、乾燥させてから使用します。ポニーテールや三つ編みの髪をほどいて、洗髪して乾かすようなイメージです。

工房の様子を見に行きましょう

ミアラカさんの工房は、マダガスカルの高地にある首都から少し離れた場所にあります。

工場のような場所ではなく、庭にござを敷きながら、皆がリラックスして作業をする、人間的であたたかい職場です。2024年プリスティンのコレクションで登場した「ラフィアマルチカラートートバッグ」を編んでいる様子です。

こちらの色鮮やかなラフィアは、草木染めによるもの。なんと草木染めもこちらの工房で手掛けています。玉ねぎ、ターメリック、藍、ラテライトという土、チーク材といわれる樹皮などを使います。庭で栽培している藍を採取し、ドラム缶の中で自分たちで染めています。

編むのに使うのはこのかぎ針編み。工房ではみんなが シャッ、シャッ、とラフィアを編む音が聞こえます。

働きやすい環境づくりにも力を入れています

工房で働いているのは20名ほど。
ふたりでとなりに座って作業しているのは、アトリエでただ一人の男性の編み手TOLOTRA(トウルチャ)さんと、その妻SANTATRA(サンタチャ)さん。いつも夫婦二人で座って作業されているそうです。

作業は朝から7〜8時間くらい。家から歩いて来る人もいるので、陽が暮れないうちに帰ります。妊婦さんは家に持ち帰って作業したり、働きやすい環境が整っています。


みなさん作業の途中で、蒸したお芋やフルーツ、MOFO GASY(ムフガシ)というマダガスカルのパンなどを食べたりと、おやつタイムを楽しみます。

メンバーのスキルアップ研修も行っています

ミアラカの工房では、生産活動をストップして1ヶ月間のスキルアップ研修も開催しています。

写真は2023年の様子。グループに分かれて自らデザイン制作した作品のコンテストをしました。


仕事のやりがいを生み出したり、士気が上がるように、メンバーを大事にする工房のあたたかさが伝わってきます。

ミアラカ代表の井口さんは、現地に行けない時は日本から現地とやりとりをするのですが、このあたたかな工房の雰囲気は、人を大切にするリーダーの存在が大きいそうです。


シャイな方ですが、素敵な笑顔でラフィアからひょっこりお顔を見せてくださったKEMBA(ケンバ)さん。


感性が豊かで、繊細なやりとりもできるから、やりたいものづくりのニュアンスも伝わるそうです。日本に憧れている彼女。いつか日本でお会いしたいですね。

作るだけでなく、未来の繁栄も考える。

ミアラカさんはマダガスカルでものづくりを行うだけではなく、植樹活動もされています。

ラフィア椰子は一生に一度しか実を付けず、実がついた木は寿命となり、落ちた実がまた大木となり葉をいただけるまでには10年の歳月がかかります。

限りある大地からの頂き物だからこそ、この先もマダガスカルの産業として発展していくことを願い、2023年からは現地で何十年もラフィアの植樹活動をしているASSOCIATIONと共に植樹活動をスタートしました。

首都から500kmほど南下したフィアナランツォアという中央高地の大自然の中。村の小学生も教育の一環として一緒にラフィアの苗を植えています。

「植樹したラフィアは、ミアラカの木でも、誰の木でもなく、大地の木。大地の恵みに支えられているのは人間でありその逆ではないことを、リーダーも私たちも忘れてはいけないと思っています。」井口さんは熱い言葉で話してくださいました。

世界最高品質の美しいラフィア製品を

マダガスカルは、現在世界的に人気の高まるラフィア製品の需要に後押しされ、新しい工房がたくさんできているそうです。


しかしミアラカでは、ゆっくりのんびりとした国民性を尊重し、短期的な納期を設けたり無理強いすることなく、少数生産で作り手がゆとりを持ってものづくりに取り組める環境を整えることを大切にしてきました。

ラフィアのものづくりを通して実現したい事は、原料だけが輸出されるのではなく、マダガスカルの産業として現地での雇用や収入につながること。


井口さんは「貴重なラフィアが安く大量に消費されるのではなく、少ない量でも品質を高めて美しいものにして、価値を上げていきたい。」と話してくださいました。

いかがでしたでしょうか。

「マダガスカルと日本を、ラフィア愛でつなぐ。」

ラフィア愛に溢れラフィアを編むマダガスカルの人たちと、ラフィアが好きでお使いいただくお客様方の双方のラフィア愛が紡いでいく物語をイメージして、マダガスカル語で共に(WITH)を意味する「ミアラカ」を名付けたそうです。


ミアラカとプリスティンで作る製品には、ラフィアが好きな方はもちろん、情熱あるものづくりに想いを寄せる方もきっと心惹かれる要素が詰まっています。


工場で作るカンペキな仕上がりでは味わえない、編み子の手先や収穫したラフィアそのものの素材感、その時々で変化する草木染めの色合いを、ぜひ味わいお楽しみください。

ものづくりに宿るたくさんの愛が伝わりますように。


素材提供:株式会社ミアラカ様

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