ものづくりストーリー

カラミ織フラワー刺繍ができるまで

ほかとは何か違う。立体的で生き生きとした刺繍

オーガニックコットンのナチュラルな刺繍が美しい「カラミフラワー刺繍」の生地ができるまでを取材しました。すべてのものには生まれてきたストーリーがあります。みなさまの手元に届くまでに辿ってきたものづくりの様子を、少し覗いてみませんか。

シアーな生地に涼しげに浮かぶ小さな花の刺繍

カラミ織のメッシュ生地に、オーガニックコットンの白糸で小さな花の刺繍をあしらいました。プリスティンでもファンの方が多い、刺繍シリーズです。

石川県金沢市へ

石川県金沢市の金沢駅から徒歩20分ほどの住宅街にある、神奈川レースの協力工場、坂本レース株式会社さんにお邪魔しました。坂本社長ご夫妻が取材にお付き合いくださいました。

創業75年のエンブロイダリーレース工場

坂本レースは創業73年の金沢市で唯一のエンブロイダリーレース工場。中に入ると大きな刺繍機がガシャンガシャンと音を鳴らしながら迎えてくれました。創業時は織物工場(機屋)として稼働していたそうですが、途中から織物だけではなく違うことをしなくては、という想いで刺繍機を購入。1972年レース専業工場に切り替わるタイミングで現在の土地にお引越しされたそうです。

いよいよ刺繍がはじまります

機械の刺繍できる長さは13.7m。15mほどにカットされた反物が横にピンと張られて上下2段に並びます。

この写真は前半の刺繍がちょうど終わる頃。

刺繍機は針が固定されており、ピンと張った状態の生地が機械の力で上に登っていきます。前半の刺繍が終わると、機械が自動で止まり、アラームを鳴らしてくれます。

段をかえる作業は人の手、これこそが均一に美しく仕上がるコツ

すると社長が登場。刺し途中の針は生地に刺さったまま、上の方に出来上がった刺繍の生地を巻き取りながら棒を下げ、待機している下の棒に巻かれた生地を広げてピンと張り直します。針が生地に刺さっているので、大きくズレることはないのですが、生地が柔らかいので、前後でテンションの差がでないように人間の調整の技が必要です。

この作業はとても難しく、社長にしかできないのだとか。大変な巻き上げ作業をしてでも、小さい幅で刺繍した方が、テンションが均一になるからきれいになると思うよ。と坂本社長は巻き上げをして美しく仕上げることにこだわります。「わたしゃ絶対ズラさんよ」とおっしゃる坂本社長の職人魂に胸が熱くなりました。

上段、下段ともに巻き上げ作業が完了

上段、下段ともに巻き上げ作業が完了しました。ピンと張った生地がきれいです。かつては第2工場も近くにあり、新しい機械も持っていたそうですが、時代とともに厳しくなり、新しい機械と工場を手放すことになったそう。

あえて古い機械だけを残したのは、古い機械だからこそできる風合いが好きだから。新しい機械はスピードが早く効率は良いのですが、古くて制約も多い機械をメンテナンスしながら作る刺繍の方が楽しいそうです。「どうしてか、人と違うことを選んでしまうんやなぁ」と笑いながらお話しくださいました。

プリスティンは上糸も下糸も綿糸で作ることにこだわっている為、スピードを上げると糸が切れてしまいます。ゆっくり刺繍をしてくれるこの機械とは相性抜群。糸のふっくらとした表情は神奈川レースの佐藤さんが作ってくださるパンチング(針の動きの設計)と、この機械があってこそ、なのです。

こぼれ話、その道具なんですか?

坂本社長が出迎えてくださった時に耳の上にペンのように掛けていたものが気になって「それは何ですか?」とお聞きしたら、このように針に糸を通す時に使う道具だと教えてくださいました。

先端を近くで見ると針の穴より小さなフックになっていて、びっくり!繊細で美しい道具でした。

こんな美しく便利な道具があるとはいえ、13.7mの生地、1段520本で合計1040本の針に糸を通すのですから、頭が下がります。

神奈川から離れて金沢で、愛情たっぷりに刺繍してくださったカラミフラワー刺繍。「いい生地ができた」と坂本社長も太鼓判をくださいました。刺繍にかかる手間暇は見えませんが、袖を通すときっとその気持ちよさに、愛情を感じていただけるのではないかと思います。ぜひお試しください。

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